あのボールはサッカーの質を変えた。
@国家代表単位のサッカー/フットボールはあまり見ないのだけれど、それでもこれだけアホのように報道していれば
前半だけ、後半だけ、と試合を見ることはあって、そこで思ったこと。
このボール、サッカーを変えてしまっている、ということ。
サッカーというスポーツは、かなり早い段階で「形式」が決まってしまい、ルールもシンプルで非常に少ないこともあって、
1チームの人数、ピッチのサイズ、ゴールの大きさ、ボールの大きさ、などといった「外的な要因」によって
ゲームの質が変わることが、たいへん少なかった、ということができる。
だから、サッカーにかかわる人たちは、「システム」「戦術」といった、いわば、ゲームの「内容」的な側面に、
サッカーの質的な深化・進化を追求してきたのだ、とも言えるだろう。
オフサイド・ルールは、もちろん歴史的に変化したが、観客やプレイヤーが戸惑うほどの変質は起きなかった。
むしろ、大きな影響を与えたルール変更は、92年のEURO以降の、「GKへのバックパス禁止」のほうだろう。
このボールが何をもたらしたか。
暴力的に言えば、「しっかり守ってカウンター」という、弱者の戦術を事実上不可能にしてしまった、ということではないか。
ここ数年間のフットボール・シーンを席巻したやり方として、ペナルティ・ボックスのあたりで最終ラインを設定、
守備的な中盤のライン(3枚)を深めに設定して、トップには、足の速い選手・背の高い選手・ドリブルのうまい選手のいずれかを
置いておく。深めの場所で奪ったボールを、なるべく長いボールですばやくトップの選手に当てて、驚異的な運動量を誇る
中盤の選手達が一斉に押し上げていく……、というリアクション・サッカーをあげることができると思う
(もっとも洗練されているのがモウリーニョのチェルシー)が、そのやり方が、たいへんに難しくなったのではないか、ということだ。
たとえば、セルビア・モンテネグロ、アメリカ、チェコ。怪我人やコンディショニングの問題もあったとはいえ、
固い守備をベースに置いたチームの苦戦は、「しっかり守る」以前に、ミドル・ロングでDFラインを破られてしまう、という
今大会の顕著な傾向となってあらわれている(日本だって守れなかったでしょう)。
いままで、ミドルやロングレンジのシュートは、DFがクッションになって入ることはあったけれども、基本的には、
大型化し、筋力が強くなったGKがポジショニングのミスをするか、 あるいは、よっぽどのコースとタイミングを狙われなければ、入らなかった。
それが、周知の通り、ぼこぼこ入っているでしょ?
代表チームだと、練習時間がみじかいから、より個人の力がクローズ・アップされる、ということはあるかもしれない。
だからこそ、来たるべきシーズン、クラブ・チームレベルでのフットボール・シーンがどう変わるのか、じっくりと見定めたい。