2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田裕『昭和天皇の終戦史』(岩波新書 ISBN:4004302579)

……わたしたち日本人は、あまりにも安易に次のような歴史認識に寄りかかりながら、戦後史を生きてきたといえるだろう。すなわち、一方の極に常に軍刀をガチャつかせながら威圧をくわえる粗野で粗暴な軍人を置き、他方の極には国家の前途を憂慮して苦悩するリ…

四方田犬彦『かわいい論』(ちくま新書 ISBN:4480062815)

わかったこと。 四方田犬彦は、いろいろな言語を知っている。 四方田犬彦は、いろいろな国に行ったことがある。 四方田犬彦は、博学である。 「かわいい」と「美しい」という語の対立が重要である。 「かわいい」を理解するためには、それが日本から発信され…

五百旗頭真『日米戦争と戦後日本』(講談社学術文庫 ISBN:4061597078)

アメリカに残された外交文書を精査・駆使しつつ、「占領後」の世界をどうすべきか、をめぐって争われた米国政府内部の政治プロセスを詳細にあとづける。歴史や政治というのはつねにそういうものなのだろうが、いくつもの偶然と、思いもよらぬ僥倖と、ちょっ…

ナンシー関『何がどうして』『何が何だか』(角川文庫)

いまごろナンシーがマイブームというのも気恥ずかしいのだが。思わず連続で読んでしまった。買ってきてさえしまった。エッセイとしては、すでに10年近く前の素材を扱っているわけで、時事性はすでに薄れている。それでも読めるのは、きちんと、構造を押さえ…

メディア研究は彼女の批評を超えることができるのか

という問題設定じたいが、あまりにも「とほほ」な陳腐なものなのだけど。 やっぱり、読み返してみると、テレビ研究、オーディエンス研究にとってのひとつの道標、だとは思う。やっぱり凄いし。 「中山秀征的なもの」がテレビを覆い尽くしていく90年代、とい…

これは「めでたい」ことなのか?

宮内庁の逆襲恐るべし。 すわ、壬申の乱、再び?

『卍』のテクスト生成

必要あって、谷崎潤一郎『卍』(1928-1930)の初出版を取り寄せ、読んでいるのだが、初出形を読むことじたいが、この作品のテクスト生成の過程に立ち会っているかのような、ちょっとスリリングな気分を味わうことができる。初出形は、 園子の語りが、東京語…

真保裕一『連鎖』(講談社文庫 ISBN:4061857193)

著者のデビュー作。いかにも若書きという感は否めない。息をつかせない展開力、というか、次々と「疑問」が出され、その次の章には「解決」してしまう、という「連鎖」が読み手を飽きさせない(2時間で読了してしまった)。だが、事件を複雑にしすぎてしま…

清水美知子『〈女中〉イメージの家庭文化史』(世界思想社 ISBN:4790710610)

かつて中流家庭の主婦は、家計の予算を立て管理し、女中の仕事ぶりを指揮・監督して家内を取り仕切るホームメーカー(家庭管理者)としてなくてはならない存在であった。それが、住み込み女中がいなくなったことで主婦は、「女あるじ」の座を手放し、無給のハ…