「円本」現象は何を変えたのか。

島健一郎「「円本」の新聞広告に関する一考察」(『日本出版史料』2005.10 ISBN:4888883572)を読む。漠然たるイメージだけで語られがちな円本に対し、実証的なアプローチを試みるもの。広告の文言だけからでも、「円本」が、本という商品のサーキュレーションをどう変えてしまったのかがたどれる、という点がとても興味深かった。

  • なぜ予約物なのに、広告が出続けたのか。
  • あれだけの大量の円本に、小売店側はどう対応したのか。

つまり、全集・叢書を支えていたシステム(それは、利益を安定して確保するために必要なやりかただった)としての「予約販売」という発想が根本から覆り、出版、仲買(取次)、小売がそれぞれの創意工夫でモノとしての書物を流通させていた時代を、ムリヤリ終わらせてしまった、ということなのだろう。