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深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫)

楢山節考 (新潮文庫)作者: 深沢七郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1964/08/03メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 83回この商品を含むブログ (109件) を見る @必要あって、「楢山節考」(『中央公論』1956.11)の何度目かの読み返し。 @考えれば考えるほど…

梶井基次郎「のんきな患者」「ある崖上の感情」(『梶井基次郎全集』ちくま文庫版)

梶井基次郎全集 全1巻 (ちくま文庫)作者: 梶井基次郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1986/08/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含むブログ (54件) を見る「のんきな患者」は面白い。不治の病と意識されてしまった結核の周囲に、 さまざ…

『日本文学』2006年5月号

『日本文学』2006年5月号が届く。専門外だが、水口幹記氏の「奈良時代の言語政策」は興味深く読んだ。 よく考えてみれば当たり前なのだが、今も昔も、外国語はさまざまな権力を生み出す。水口氏は、「漢語」と「漢音」とは区別されている、という仮説をもと…

「日本社会論」とは何だったのか

必要あって、中根千枝『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』(講談社現代新書 ISBN:4061155059)を読む。理論装置はシンプルだ。人間が集まって、組織を作り上げる。その原理を「場」「資格」という二つに還元したうえで、いずれを・どの程度重視するか、と…

政治的プレイヤーとしてのヒロヒト

ところが天皇の側はまったく逆に、朝鮮戦争での米軍の苦境は、ソ連の直接侵略か国内共産主義者の間接侵略による「革命」と「戦争裁判」と天皇制打倒につながるものとみたのである。とすれば、戦争放棄の新憲法のもとにあって、この未曾有の危機を救えるもの…

たちさわぐ偽史たち、あるいは大塚英志『木島日記』『木島日記 乞丐相』(角川文庫)

実在の人物・実際の事件に虚構の皮膜をかぶせ、物語を介して世界を浮かび上がらせていく。文庫版『木島日記』の巻末で、大塚じしんが言っているように、虚構言語としての小説のひとつの可能性は「偽史」にある。そして、「偽史」とは言っても、虚構世界の中…

メディア研究は彼女の批評を超えることができるのか

という問題設定じたいが、あまりにも「とほほ」な陳腐なものなのだけど。 やっぱり、読み返してみると、テレビ研究、オーディエンス研究にとってのひとつの道標、だとは思う。やっぱり凄いし。 「中山秀征的なもの」がテレビを覆い尽くしていく90年代、とい…

『卍』のテクスト生成

必要あって、谷崎潤一郎『卍』(1928-1930)の初出版を取り寄せ、読んでいるのだが、初出形を読むことじたいが、この作品のテクスト生成の過程に立ち会っているかのような、ちょっとスリリングな気分を味わうことができる。初出形は、 園子の語りが、東京語…

「円本」現象は何を変えたのか。

高島健一郎「「円本」の新聞広告に関する一考察」(『日本出版史料』2005.10 ISBN:4888883572)を読む。漠然たるイメージだけで語られがちな円本に対し、実証的なアプローチを試みるもの。広告の文言だけからでも、「円本」が、本という商品のサーキュレーシ…