五百旗頭真『日米戦争と戦後日本』(講談社学術文庫 ISBN:4061597078)


アメリカに残された外交文書を精査・駆使しつつ、「占領後」の世界をどうすべきか、をめぐって争われた米国政府内部の政治プロセスを詳細にあとづける。

歴史や政治というのはつねにそういうものなのだろうが、いくつもの偶然と、思いもよらぬ僥倖と、ちょっとした個人的な思惑や対立が、様々に作用しあって、一つの現実が浮き上がる。歴史や政治に、ダメだと言われながらも、ついつい「たら、れば」を考えたくなるのは、そのような事情も作用しているだろう。

たとえば、ルーズベルトがもう少し長生きしていたら。
ルーズベルトが、個人外交に固執せず、国務省の官僚たちとの協力関係にあったなら。
なんだかよくわからない政治バランスの結果、トルーマンが副大統領候補になっていなかったら。
国務省知日派グループが、戦後の太平洋政策の原案立案に関与できなかったとしたら。
陸軍長官が、ロンドン軍縮会議のときの米国代表全権ではなかったら。

1944年から45年にかけて、日米両国は、奇妙な並行関係を見せながら、政局のうねりを起こしていく。ヒロヒトへの評価が激甘な点が気にくわないが、原著が発刊された時代(1989年)ゆえのことなのか。