吉田司『王道楽土の戦争 戦前・戦中篇』(NHKブックス ISBN:4140910453)

歴史に「たら、れば」は禁じ手だとよくいわれるが、たら・ればを考えることができるからこそ、そして、現在とはちがった「いま」を想像させるからこそ、歴史は面白い。これだけ思いっきり「たら、れば」を乱発してくれるほうがすがすがしい、というものだ。そして、最後に出て来るのが、アジアの農業を、イナゴのように根こそぎダメにしていった、「トンデモ思想」の核で、しかも五穀豊穣の神、アマテラスというのだから痛快である。
吉田は、「怨念」に注目する。そこには、葛藤があり、やるせない思いがあり、人を動かすバネがある。そのような、「怨念」の集積としての列島像をえがいていくと、ひとりでに、ナショナルな単位としての「日本」が壊れていく。