高橋呉郎『週刊誌風雲録』(文春新書 ISBN:4166604864)


戦後マス・ジャーナリズムの主軸を担った週刊雑誌をめぐる、貴重な同時代史。扇谷正造率いる『週刊朝日』と徳川夢声の対談コーナー、『週刊新潮』の斎藤十一草柳大蔵、『週刊明星』『週刊文春』における梶山季之の活躍、そして、『女性自身』のマーケット戦略。


編集者(デスク)とライターたち(草柳、梶山、竹中労など)の群像を軸に、わずか数年の間に急速に市場を拡大し、メディアの中心を占めるようになった週刊誌の創世期(本書が触れているのは、実質的には10年にも満たないスパンの時間である)が、生き生きと語られている。


とくに重要なのは、「物書き」の中に、「ライター」という発想が登場した、ということだろう。井上光晴も、種村季弘も、後藤明生も、かつては週刊誌のライターだった。

 大宅壮一流にいえば、(梶山季之門下の)岩川(隆)は“文学通り”で、中田(建夫)は“マルクス通り”で、足を止めていた。あるいは、文学青年崩れ、マルクス・ボーイ崩れの失業者といったほうがわかりやすい。それでなくても、就職難の時代だった。大学の文学部を出ると、教師になる以外はマスコミ関係の入社試験を受けるしかなかった。これが難関だから、試験に落ちた“マスコミ浪人”の失業者も多かった。私も、ほとんどそれに近かった。そういう失業者群にとって、相次いで発刊された週刊誌は、失業救済機関のような機能をもっていた。(高橋呉郎『週刊誌風雲録』文春新書、2006:177)