梶井基次郎「のんきな患者」「ある崖上の感情」(『梶井基次郎全集』ちくま文庫版)

梶井基次郎全集 全1巻 (ちくま文庫)

梶井基次郎全集 全1巻 (ちくま文庫)

「のんきな患者」は面白い。不治の病と意識されてしまった結核の周囲に、
さまざまな「物語」と「願い」「祈り」が、ない交ぜになって引き寄せられる。
そのさまを、すこし惚けた感じの関西語の話者が、冷静に(まさにヒューモア)、淡々と
描き取っていく。


宗教は民衆の阿片、というけれど、大事なことは、阿片でも求めずにはいられない人がいる、
っていうことだ、という誰かの言葉を思い出した。