深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫)

楢山節考 (新潮文庫)

楢山節考 (新潮文庫)


@必要あって、「楢山節考」(『中央公論』1956.11)の何度目かの読み返し。


@考えれば考えるほど、不思議な作。
テクストからは、かなりきれいに歴史性の痕跡がぬぐい去られている。


 わずかに、「天保銭」「浪花節のような」という文言から、
 おそらく明治以降であろう、ということがわかる程度である。


@いってみれば、これは、ひとつの寓話、お伽噺である。
歴史から切断された、「過去」という実験的な、そして、半ば
文化人類学的に「観察」された空間。これは、決して「日本」ではないし、
ましてや、過去の現実でもない、ということを、改めて強く意識させられた。