真保裕一『連鎖』(講談社文庫 ISBN:4061857193)


著者のデビュー作。いかにも若書きという感は否めない。

息をつかせない展開力、というか、次々と「疑問」が出され、その次の章には「解決」してしまう、という「連鎖」が読み手を飽きさせない(2時間で読了してしまった)。だが、事件を複雑にしすぎてしまって、結局、嫉妬と復讐と名誉欲という2時間ドラマ風の人間ドラマしか残らなかった。

つまり、「事件」=食糧品の横流しや、密輸、食品輸入行政と業者との曖昧な関係、といった点については、見事に後景化されてしまった。これでは、「社会的」な作品だとは、とてもいえない。

10点満点で、5.5点、というところですね。